9歳と1日
私は夏季休暇で今週はずっと休みです。でも、雨ばかりのせいなのか『マックス』がいるからなのか、全く外出せず家にいます。東京では16日連続雨というのは40年ぶりとのことで、ついつい自分の悲しみを重ねて考えてしまいます。
奥さんは仕事、子どもは保育園と、それぞれ毎日が動いているわけですので、休みの私は彼のご飯を頻繁に出しながら容態を見守っています。
しかし物理的には非常に暇です。彼には負けますが…(笑)。
手術やその後のエコー検査のため大きく刈られたお腹周りの毛。点滴や注射のために腕の毛の一部も刈られ、剥き出しになった腕は骨と皮だけのように細く、痛々しい姿は変わりません。
腫瘍が少し大きくなりました。
奥さんとは
「腫瘍が大きくなったね…」
「…そうだね」
「これからもっと大きくなっていくんだろうね」
「うん」
という解決策のない会話。
最近いっぱい食べていて、日中は少量ながら3時間に1回のペースでご飯を食べているせいか少し太ってきた気がします。
ただ、それも腎臓の裏に溜まってしまっている水(腹水)のせいかもしれません。
貧血は無くなってきた気がします。
ひょっとして癌じゃないのではないかという無謀な期待を抱いたりしますが、それを絶望的に否定するような真っ黒なうんち。現実は非情です。
表情は相変わらずケロッとした顔なんですけどね。
何の救いもなく、時間だけが経っていきます。
もはや私たちにできるのは、後悔の無いよう、ただただそばにいることだけです。それが『マックス』のためなのか、自分たちのためなのか分かりませんが…。
どれくらい許されているかさえも分からない残された時間を、とにかく大事に大事に過ごしています。こんなにゴールを期待しない過ごし方は初めてです。
そんな気持ちで過ごしている中で、少しずつ私たちにも覚悟や絶念が出来始めています。
きっと辛くていっぱい泣くでしょうし、感じたこともない虚無感が襲ってくると思いますが、私たち家族は乗り切れると思います。今ではそんな気がしています。
「とにかく痛くなければいいなぁ」と何日も前に言った奥さんの言葉がずっと耳から離れず、せめて微笑ましく過ごしきってくれることを願っています。